そんなにおしゃれにこだわるわけじゃないから、新小岩駅北口の1,000円カットだ。
でもここは、そこらへんにある10分1,000円のカットとは違う。
古いシャンプー台。備え付けの鏡。店の作りが昭和レトロ。
駅前だけど古い建物の1階の奥まったところにあるこの店は、通りすがりではなかなか気づかない。
そんな店で、混まない平日はおばあちゃん一人で切り盛りしている。
「最近ガタが来てる」 なんて言うけど、いたってお元気。一日中の立ち仕事も苦にせず、午前8時から夜8時まで。
「忙しくてときどきお昼食べるの忘れちゃう」と言って笑っている。
お店の看板には「10分1,000円カット」って書いてある。
でもおばちゃんは気にしない。時間を使って髪を切る。ヒゲも剃らない、シャンプーもない、ただ髪を切るだけだけど1時間近くかけちゃう。
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話も軽妙。
故郷の福島、東北の地震で原発事故の避難地域になっちゃったはなし。
お孫さんが福島で美容師になったはなし。
おばちゃんのお母さんが98歳で、お元気に農業をしているはなし。
住んでいる公団住宅に空き巣が入ったはなし。
そして、亡くなって20年になる旦那さんのはなし。
どんなはなしも、朴訥とした東北弁で、淡々とそして明るく話す。
髪を切られながら、おばちゃんの話にあいづちを打つだけだけど、なんだか楽しい。
どことなく母親に、髪をいじられているような心地よさがある。
おばちゃん、77歳。
来年も元気でいてね。
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