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2015年12月12日土曜日

[大人の話題]人形アニメ監督高橋克雄さんが憂う宮崎勤事件

今日の東京新聞に、葛飾に住んでいた高橋克雄さんのことが掲載されていた。

人形アニメの先駆者で今年四月に八十二歳で亡くなった映像作家、高橋克雄さんの作品を上映する「メモリアル公演」が十二日、葛飾区立石のかつしかシンフォニーヒルズで開かれる。 
高橋さんは葛飾区に製作スタジオを構え、幼少期の戦争体験を作品に反映させてきた(酒井翔平)。   
長崎市出身。終戦後に朝鮮半島から引き揚げ、原爆で焼け野原になった故郷で家族の骨を探した経験を持つ。その後、葛飾・亀有に引っ越し人形劇団で脚本や演出を学び、自宅をスタジオにした。亡くなる直前まで住み続けた。   
一九六七年製作の「一寸法師」は万博で上映され、七二年製作の「かぐやひめ」は十一カ国語版が作られるなど、作品は国内外から高い評価を受けている。二〇〇六年、戦争体験をまとめた小説「ナガサキのおばあちゃん」も出版した。   
公演は区ゆかりの偉人の功績を住民に知ってもらおうと、葛飾区が主催した。「一寸法師」や英語版「かぐやひめ」、戦争のむなしさを題材にし、スペイン国際映画祭で「二十世紀に記録されるべきアニメ百選」に選ばれた「野ばら」の三作を上映予定。中学校教師で、長女の佳里子(かりこ)さん(55)=鳥取県八頭町=も参加し、製作活動のエピソードを語る。   
佳里子さんは「父は子どもたちの平和を願い映画を撮り続けてきた。戦後七十年の節目でもあり、今の子どもたちにもぜひ見てもらいたい。葛飾から世界的な作品が生み出されたことも知ってほしい」と話す。  午後六時開演。入場無料で、定員七百人。問い合わせは、かつしかシンフォニーヒルズ=電03(5670)2222=へ。 
東京新聞2015年12月12日

 「野ばら」という高橋さんの作品は知らなかったのだけど、youtubeにあったので興味にある方はどうぞ。



さて、高橋克雄さんのことをいろいろ調べていたら、「アニメの弊害」について訴え続けた人でもあったみたいですね。

アニメの弊害について、朝日新聞の「論壇」にも投稿している。

良質アニメも度を越すと危険

東京都 高橋克雄(アニメ作家 56歳)

 かつて私が本誌論壇で、アニメの危険性を指摘してから情報消費者運動が起こり、実践の中から多くの教訓を得た。初めは俗悪アニメを問題としていたが、ことはもっと深刻だった。「アニメを見て涙を流す心の優しい子なのに?」という相談が多い。そうした心優しいはずの子供が、現実には極めて恐ろしい反応を示すのである。

  アニメの大量摂取に象徴される事態は、実は人類が初めて抱え込んだ“心の中の原発”であり、『核』問題と言える。今まで人類はこれほど大きな虚構の現実を、子供に与えた歴史を持たない。

 アニメはシンプルでピュアだ。現実より明快で純な世界だ。それだけに、そうした虚構の現実を幼児期から毎日摂取すれば、当然、心はその魅力的な世界で生活を始める。向こう側で暮らすようになると、きれいごとではないこちら側とのズレが起こる。

 そのギャップは、自分を囲む生の人間たちを不快と感じさせ、やがては自分を常に困難に陥れる「美しくない現実環境」を激しく憎むようになる。こうした心の中毒少年たちを、現実に引き戻すことは、極めて困難で成功例は少ない。

 良質のものであっても、過度の入力は危険なのである。ゲームも含めた映像の麻薬から子供の感性を守るのは親と教師。良い情報を数少なく与えることが大切である。自衛のための正しい情報管理を切望してやまない。 1989年8月『声』 






高橋さんは、心と体が発達する少年期をアニメという虚構の世界 が支配してしまうことの怖さを訴えているのだが、この1989年あたりはヲタクをめぐってひとつの大きな事件が起きていた。


宮崎勤による幼女連続誘拐殺人事件だ。


事件は1988年のできごとだが、この歳は私がちょうど大学を出て英字新聞社に勤めだした頃のことであり、姓が同じということもあり印象に残っている。


なによりもアニメに没頭した、いわゆるヲタクが起こしたこの事件は大塚英志中森明夫との対談集Mの世代―ぼくらとミヤザキ君』に詳しい。

僕がこの本を読んで、現実の中での虚構の世界の無限の広がりに恐怖を覚えたように、高橋克雄さんは人形アニメ監督として、その世界の職業人として恐怖を覚えていたのだろうと思う。

しかし文頭の「野ばら」はすてきに出来上がった作品である。


ピュアな気持ちで、高橋さんの作品に触れられる機会になったと思う。


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