[大人の新小岩] すき家で深夜働くカマールのこと


「アチャーやっちまった」


朝起きて、お弁当のご飯を詰めようと炊飯器の蓋を開けたら、炊けてなかった。


炊けてなかったどころか、お米から研いでない。


昨日は帰宅も遅くて台所でバタバタしながらも


「さぁあとはごはんを炊くだけだ」


となって気が緩んだ。


先にお風呂入ってから寝る前に研げばいいやと思っていたのだけど、お風呂に入ったらよけいに気が緩んだ。


お弁当のご飯はもちろん、朝食べるご飯もない。


最近は糖質制限が流行っているしランチはご飯抜きで行くか、と決めたものの朝は流石にちゃんと食べたい。


しかたなく駅前のすき家に行くことにした。



「イラッッサイマゼ」


店に入ると、店員の危なっかしい日本語の挨拶がきた。


ん?いまなんて言った?


顔を見るとアジア系の外国人。


最近は働いている外国人多いから驚きはしないけど、彼らのマニュアル通りの日本語はほとんど正確ではない。


ネームプレートには「カマール」って書いてある。


そんな日本語だから注文もちゃんと聞いているのか怪しくて、おもわずメニューを指差しながら注文をした。


朝5時前。


お客さんは僕しかいない。


店員の外国人もやることがなくて手持ち無沙汰。


「どこから来たの?」


「ん?ん?」


まさか話しかけられるとは思っていなかったんだろう。


「バングラデシュです」


「夜アルバイトしているんだ」


「そうです」


簡単な日本語はわかるみたい。


もう少し話そうかと思ったけど、朝帰りのおにいちゃんが店に入ってきたところで会話は途切れた。


「さて、行くか」


レジでカマール君にお勘定をしてもらいお釣りをもらうと、小銭が濡れていた。


すき家はご存じのように、深夜は職員一人勤務の「ワンオペ」だ。カマール君もキッチンにフロアーに忙しいのはわかる。


「カマール君、濡れた手でお金を渡しちゃだめだよ」


自分の名前を呼ばれたのはわかったみたいだけど、僕の言ったことは通じていないようだった。


英語でも通じず、残念ながら僕は伝えることを諦めた。


アジアの中でずば抜けて成長しちゃった日本。そこに働きに来る外国人。


バングラデシュで生活が出来なくて日本に来るのか、留学などで来ているのか。


日本語も話せず、黙々と夜中働くカマール。


店を出ると朝日が眩しく初夏の陽気だった。


バングラデシュは今、どんな季節だろう。

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